野菜たちを見て

家におじいちゃんとおばあちゃんが育てた野菜がある。
そこから関東平野がはじまる、そんな感じの土地で今の季節は乾いた風がびゅうびゅう吹く。
土が付いた根っこ、枯れた葉っぱ。自分たち用の野菜たち、という感じの顔立ち。

顔を合わせて喋るということは言葉を交わすという事実以上に、
触れた手の感触とか笑ってなくなる目とか、言葉を投げたときの返ってき方とか。
なんで空気って土地によってちがうんだろう。
いいことばかりで過ごしてきたわけでもないのに、なんで故郷の空気はあんなに身体に馴染むのか。

街に住みさまざまな土地のいろいろなものを集めて、良さに光を当てるのも生き方の一つではあるけれど、
ありあまるそこにあるものたちをあれやこれやどうにか輝かせる方法を模索するほうの生き方のほうが、
心にすんっと来る気が、ベランダにある野菜たちを見て。

大事に食べます。